物理や数学でよく目にするギリシャ文字ですが、世界保健機関(WHO)が5月末に新型コロナウイルスの変異ウイルス(変異株)に対して、「汚名を着せることや差別につながることを避けるため」、新たに各地(国)で見つかった変異株に対して、ギリシャ文字を使った呼び名をつけることにしました(下表参照)。
新型コロナウイルスの変異は、感染者の増加に伴い進行して行きます。現在確認されている最新の変異株がラムダ株。
これは、日系ペルー人のパブロ・ツカヤマ教授(カジェタノ・エレディア大学)が初めて確認したものです。
世界各国でデルタ株の蔓延が問題とされる中、人口あたりの死者数が世界最悪となったペルーでは、このラムダ株による感染が拡がっていました。これまでに、全人口の約0.6%にあたる、20万人が亡くなったそうです。
そんなペルーですが、現時点でワクチン接種率は他国と比べて低いにも関わらず、短期間のうちに、感染者数が激減しています。
先日ブログに書いたインドと同様の現象が起きているわけです。ペルーの保健局などが行った調査によると、一部の地域では既に7割の人が抗体を持っているそうです。つまり、大きな代償を払い自然感染により集団免疫を獲得していることになります。
このラムダ株は、スパイクたんぱく質の一端(N末端ドメイン:NTD)にアミノ酸7つの長い欠失があるなど、14カ所に変異があります。また、スパイクたんぱく質の遺伝子のすぐ上流にあり、大きなたんぱく質を作るORF1ab遺伝子にも、アルファ株、ベータ株、ガンマ株と同様の変異があります。ラムダ株の変異の中で特徴的なのは、スパイクたんぱく質の452番目のアミノ酸の変異です。このアミノ酸は、デルタ株、デルタ株がさらに変異したデルタプラス株、イプシロン株、カッパ株などでも変化しています。ラムダ株のL452Q変異(452番目のロイシンがグルタミンに置き換わったもの)は、これまで見られなかった変異ですが、科学者たちは、452番目のアミノ酸の変異は新型コロナウイルスが細胞に感染する能力を高めると予測しています。
新型コロナウイルスのスパイクたんぱく質は、ヒトの肺などの細胞にあるACE2受容体たんぱく質に結合して体内に侵入しますが、452番目のアミノ酸は、両たんぱく質が直接相互作用する部位にあります。この452番目のアミノ酸は、多くの中和抗体によって認識され、この部位に変異があると、中和抗体が結合しにくくなり、ワクチンの効果低下するわけです。つまり、この452番目のアミノ酸が重要というわかです。
まだラムダ株については、多くの研究データがありませんが、デルタ株に匹敵するくらいの伝播性があると考えられています。
もしかすると、ファイザー製やモデルナ製のmRNAワクチンを2回接種しても、ブレイクスルー感染が防げないかもしれません。
前述のツカヤマ教授によると、デルタ株のような感染力の強い変異株について必要とされるワクチン接種率は、昨年言われて来た70%~75%ではなく、現在では90%~95%とのことです。この数字は、政府がどんなに頑張ってワクチン接種を進めても、到底到達することは不可能な数字です。なので、教授が言うように政府はもっと多くの対策を講じるべき時ですね。
参考:WHO「Tracking SARS-CoV-2 variants」
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